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これさえ聞いときゃ間違いない!今日の1曲

聞くものに悩んだらこれを聞け

【94曲目】Show You The Way (Thundercat,2017)

Drunk - Thundercat

リキッドルーム公演チケット売り切れるの早すぎィ!ThundercatことStephen Brunerさんの3枚目のソロアルバムです。Warpaintのチケットが売り切れてた時もビビったけど(インターネット・パワーにより滑り込みで確保)、Tokyoには早耳ボーイズ&ガールズがどこかに隠れ住んでいるようで毎度驚かされます。さてさて、ThundercatさんのこのDrunkというアルバムは、Kamashi Washington等のJazzリバイバルの文脈からの評価が高いようですが、自分なんかは同じベーシストということで、むしろSquarepusherなんかのイキフンをプンプン感じてハマっちゃったんですが、そういう人も少なくないんじゃないかと思ってます。なおこの方、プレーヤーとしても、Erykah Badu(2008,2010)、Flying Lotus (2010,2012,2014)Kendrick Lamar(2015)などに参加するなど引っ張り猫となっております。ちなみに、彼のThundercatなる芸名は、このアニメから来ているみたいです。意外と英語での言及が見つからないので判断がつきませんでしたが…。

 

 

Drunk

Drunk

 

 

 

【93曲目】Ar-Raqis (Clap! Clap! 2017)

 

Clap! Clap!
クラップ!クラップ!は、ディジ・ガレッシオやL/S/Dなど多数の名義で活躍するイタリア人プロデューサー/DJ、クリスティアーノ・クリッシが、アフリカ大陸の民族音楽への探究とサンプリングに主眼を置いてスタートさせたプロジェクト。様々な古いサンプリングソースを自在に融合し、そして極めてパーカッシヴに鳴らすことによって実に個性的なサウンドを確立している。彼は伝統的なアフリカのリズムをドラムマシーンやシンセといった現代の手法を通じて再生することにおいて類稀なる才能を持っており、その音楽体験におけるキーワードは「フューチャー・ルーツ/フューチャー・リズム」。クラップ!クラップ!の使命は、トライバルな熱気と躍動感に満ちていながらも、伝統的サウンドの優美さと本質を決して失わないダンス・ミュージックを提示することである。

http://www.ele-king.net/news/004718/

 

とのことです。 ちなみに上の紹介文は2015年の1stアルバムリリースツアーの時のもので、ボアダムスEYヨとの対バンなんですね。私はその存在を全然知らず、今作で初めて聴いて度肝を抜かれた側ですが、1stの時も早耳パーソンの間では結構な話題になっていたみたいですねー。今回も来日してくれないかな。個人的には早くも年間ベスト最右翼の1枚です。

 

 

ア・サウザンド・スカイズ

ア・サウザンド・スカイズ

 

 

 

【92曲目】Underwaterfall / Bearcubs (2017)

はいこんばんは。私は生きていますし音楽も聴いていて、前ほど忙しくもない。しかしながら、では、なぜこのブログを更新しないのか? いえ、気持ちはあるんです。ただ気持ちだけじゃどうにもならないことが世の中には多いですね。ということで気持ちを越えてこれは更新するしかないぞという案件が降ってくるのを待ってたんですが、それがとうとうやってきた。私の大好物、日本語の紹介が皆無のミュージシャンです。
そんなこんなで今回ご紹介するのは、BearcubsことJack Ritchie。ロンドン在住の1990年生まれのプロデューサー/ミュージシャンです。サウンド的にはいわゆるダウンテンポってやつで、James Blake直系という趣きですが、それよりはだいぶ聴きやすい。アレンジに抑揚や強弱が顕著で、ミニマルなところで載せてちゃんと盛り上がりを作ってくれるのがこの聴きやすさに直結しています。James Blake meets Jamie XXだなんていう評もありますがなかなか言い得て妙でしょう。これ以前のリリースとかを聞いてると、今作よりJames Blake的な浮遊感は薄く、その分エレクトロニカ的なフィーリングが強いです。James Blakeはちょっと濃ゆすぎるんだよな、等という印象を抱いてきた方々はドンピシャでハマると思いますよ。


Underwaterfall

Underwaterfall

 

【91曲目】After That (ぼくのりりっくのぼうよみ、2017)

 

あけましておめでとうございます。僕は死んでませんしこのブログもまだまだやる気です。ただ、今日の1曲といいながら当分は週1回ぐらいのペースになってしまいそうですが。まあ続けることが大事ということでひとつ。

さて、今日ご紹介するのは、Indiesでもなんでもない、日本のある現役大学生個人のプロジェクトです。しかもニコ動出身。歌詞もなかなか頭でっかちで、知ったばかりの単語を使いたいだけの感じは否めない。しかも名前も「ぼくのりりっくのぼうよみ」と言います。正直ここら辺りまでは、アラサーより上の年代の方々にとってはイラッとする要素しかないのではないかと思います。実際に僕も文字情報だけなら死んでも手を出さない部類だとは思いますが。

しかしですよ。残念ながら。音はかなりかっこいいんです。アレンジも自分でやってるのかは知りませんが、そうだとしたらかなりすごいですし、そうではなくアレンジャーがいたとしても、マストで名前を覚えておきたいレベルではあります。基本構造として、彼の楽曲はhip-hop的なループがベースにあるんですが、そのワンフレーズであったりとか、リズムであったりとかがめちゃくちゃニクいAcid Jazzそのものなんですな。また、詞はおいといても、歌の乗せ方、リリックというよりはフローの部分ではありますが、そこのリズム感が、日本のポップスの中での比較おいてですが、ブラックミュージック寄りなのも聞いていて大変に心地よい。これは菊地成孔あたりが反応するかどうかがなかなか見ものだと思っているのですが、今のところノーリアクションのようですね。彼にはちょっとまだまだだなと思われてるのかもしれません。とはいえ、菊地成孔はおいといても、昨年の年間ベスト1位にBlack America Againというジャジーなhip-hopを選んだ僕は、彼のことを今後も注視していこうと思っております。2017年一発目、1月の駆け込み更新でした。

 

 

Noah's Ark

Noah's Ark

 

 

 

【番外編】2016年の年間ベスト10枚

  1. Black America Again (Common) → 89曲目
  2. Take Her Up To Monto (Roisin Murphy) → 32曲目
  3. Nightride (Tinashe) 90曲目
  4. Whiteout (Warpaint) → 51曲目
  5. Staranger To Stranger (Paul Simon)
  6. Weval (Weval) → 46曲目
  7. Amnesty (Crystal Castles) → 55曲目
  8. Wabi Sabi (Cross Records) → 19曲目
  9. Preoccupation (Preoccupation) → 49曲目
  10. Panting With (Animal Collective) → 60曲目

 

はい、というわけでこれらが2016年の年間ベストになります。年内には駆け込みセーフ。今年は例年になく10枚の選定に苦しみました。特に1位の選定は散々悩んだ挙句、もう割と勢いで決めちゃいました。今年は全体的には粒ぞろいなんだけれど、例年のように、自分の音楽観を根底からがっつりと揺るがされるような、飛び抜けた1枚がなかったというのが正直なところです。隠し玉枠みたいなのもあまり無く、そこそこに名の知れた方々がズラッと並んでいて意外性みたいなのもない。まあ何年もやってたらそういうこともあるよね。運営的には、ちゃんと紹介できたものを組み込めるようなベストでよかったです。Paul Simonのだけは記事間に合わなかったけど、来年どっかで書いて、ここにあとから追加できたらよいかな。ちなみに過去の年間ベストはこちらで読めます。来年もいろいろ聞いていきましょう。では皆様、よいお年を。

 

Black America Again

Black America Again

 

 

【90曲目】Ride Of Your Life / Tinashe (2016)

LA出身のR&BシンガーソングライターTinasheの通算2枚目のアルバム「Nightride」より。こういった経歴のシンガーがアメリカには少なくないですが、むかしは子役をやってた方らしいですよ。マコーレカルキンさんみたいにならなくてよかったですね。子役をやってただけあって今も容姿端麗でお美しいので日本でも人気が出るのではないでしょうか、とも思いましたが作風が割と暗いのでどうなんでしょう。黒い+暗いの外タレが日本であんまりウケてるイメージが無いので難しいのかもしれません。白人で暗いのは結構人気出がちなイメージがありますが、Radioheadしかり、Lana Del Reyしかり。やっぱり、黒い=陽気でファンキーみたいなイメージが強いのでしょうか。こういった話をしだすとそもそもブルースとはゴスペルとは元々黒人奴隷たちの悲哀が、みたいなルーツミュージックに自信オジサンが大量発生してきそうですし、そちらは私にも手に負えないのでそろそろやめて話を戻しましょう。アルバムを通して受ける印象としては、ざっくり言ってしまうとBeyonceの去年のアルバム「Beyoncê」をさらに内省的に深化したと言えるような感じで、深いリバーブのかかったトラックの合間を縫うように有機的なコーラスとグリッチーなサウンドテクスチャがバンバン絡んできます。我々イエローモンキーがイメージするようなディスコ的なディスコサウンドとしての黒さでは無く、どちらかと言うとゴスペル寄りの黒さとでも言うべきなのでしょうか。今作もそうですが、今年はルーツミュージックとしてのゴスペルが一つのキータームとなっていたのですね。こういうのって、もう年の瀬が見えてるという時期にようやく気付くようなことではないのかもしれませんが、そういう俯瞰的なポップス批評空間の外野にい続けた結果ですのでむべなるかなといったところです。また脱線してしまいましたが、そういったゴスペルのフィーリングがベースにあるR&Bであることに加え、サウンド的に特筆すべきは民族楽器的な響きの音色がそこかしこに、しかししつこくない程度に、もっと聞かせてくれ!と思わされる程度に入ってくる点であって、個人的にはそこがかなりツボです。オジサン達がルーツミュージックに自信がお有りなら私は音色の違いに自信オジサンです。変な音色、変な和音が大好きです。あと暗い音楽も大好きです。ゆえにこのアルバムも大好きです。僕が彼女を認知したのは昨年リリースされた「Amethyst」というミックステープにおいてでしたが、正直ここまで化けるとは。そういった期待の裏切られ方も正直なところ多少はこの高評価に繋がっています。今年の年間ベストは選ぶのが大変そうだなー。

 

 

ナイトライド

ナイトライド

 

 

 

【89曲目】Black America Again Feat.Stevie Wonder (2016)

更新がすっかり滞ってしまいました。いろいろと予定が重なってしまい、しばらく多忙が続いていますが、どうにか音楽との関わりは絶やさないようにとは思っています。

さて、こちらの更新が途絶えているほんの2週間弱の間に世界は大きく変化しました。いや、そういった変化というのは、「しました」というように一過性で完了してしまうような単発ものではなく連続的なのであって、始まりや終わりなんてものは事後的に設定されるものなんだと今は感じています。つまり、私たちは、始まりも曖昧で、かつ現在進行形の、終わりの見えない大きな変化のうねりのようなものの真っ只中にいるということです。しばしば私たちは歴史を振り返る際、破局を迎えてしまう前に止めるポイントなんていくらでもあったのに、どうして誰も止められなかったんだ、などと振り返って考えがちではありますが、しかしながら実際にその大きなうねりの中にいて初めてわかることも多く、どれだけ手を尽くしても止められない慣性のようなものが存在している気が今はしていて、その最たる例がトランプ大統領の誕生であるように思います。

そしてそんな折、1991年より活動しているシカゴ出身のラッパー兼俳優のCommonは先日リリースされたばかりの「Black America Again」というアルバムのなかの同名曲で次のようなライミングをしています。

We Kill Each Other, It's a part of the Plot

昨今の状況というのは、まさに誰かが意志を持って書いたPlot=筋書きを準えているのように、一直線の方向に世界が動いているようだいうことを彼も感じているのかもしれません。このプロットの始まりがいつだったのか、それは恐らく後世の人々が定め、そしていずれ教科書に載り常識となるでしょう。ある人は911だというだろうし、またある人は1991年のソ連崩壊だというのかもしれません。ただこのプロットの結びが、破滅的な帰結ではないことだけを、心から祈っています。しかし、他方で、この現在進行形のプロットが、このまま軌道修正されることなく続いた場合にどういうところに行き着くのかが、とても具体的に想像できてしまうという実情もあります。それらを全てここに記述することはしませんが、そういった想像が現実のものとなるにつれて、事態は海の向こうの話だけではなくなっているはずだということだけは言っておかなければなりません。そうなってしまえば、僕ら自身や僕らの友人、またはその子どもたちが、七尾旅人のいう「兵士A」として、自衛隊発足後初の戦死者となる未来はかなりの確度で実現してしまっているでしょう。そして、そういった動揺が、経済不安や人種主義の脅威に怯える国民に直撃します。政権は幾度となく交代し、しばしば自民党は下野しますが、そうなったとしても、彼らが張り巡らしておいた策謀や、決定的な能力不足が理由で野党連合の政権は状況を好転させることが出来ず、政権交代が極めて短期間で繰り返されます。そうした中でますます国家としてのコントロールを喪失していき、Brexit国民投票や今回の大統領選挙でその存在が確実なものとなった「暗数」=隠れ人種主義者・ポピュリズム信奉者・または中道右派たちが、やがて隠れることなく堂々と跋扈するようになります。マスメディアは全体主義を加速させた前回の反省から徹底的にこういった「うねり」には反対し、マイノリティと堕したリベラリストの存在感を誇大に見せることでなんとか抵抗しますが、そうやって大きく見せられたリベラリストがもはや単なる蜃気楼でしかないことを人々は感じ取っています。そんな風にしていよいよ逼迫していく中で、私たちは国家としてどんな選択をするのでしょうか。政党乱立状態をスケープゴートにしてまた翼賛体制になってしまうのか、はたまた「今度は絶対に勝つ」ということを目標に徹底的にうまく立ち回ることに終始して罪なき敵対国の人々を殺めることを正当化し続けていくのか、そして最も困難な道として、非戦を貫き通すのか...。私たちの筋書きが漸くストーリー分岐するのは、おそらくこういった局面に至って初めて「問い」という形で提示されるでしょう。いや、もしかするとそういった問いすらないままに、いま現在のように、何でこうなるか誰もわからないまま、もうどうしようもないという最後のところまで行ってしまう可能性だって十二分にあるわけです。むしろ今のまま、何となく、そんなの誰が望んでいるんだと思いながらも、もう後戻りできないところまで来て初めて気付くというような「プロット」が最も現実味があるようにさえ思えてきます。

誰かが書いた筋書きをただ不可避的に準えるかのように分裂していく社会のなかで、寛容と受容、学術や文化の力を信じる美辞麗句を並べるだけのリベラリズムは無力に等しいのかもしれません。ただ、他方で、こういった状況においてニヒリズムに終始し、一段高みにいるつもりのような態度こそは最も唾棄されるべきものです。確かに、しばしばニヒリスト達が「指摘」して悦に浸るように、私たちは無力です。しかしながら、それはもはや言うまでもない「前提」なのであって、そこから何を成し遂げるか、それに全てがかかっているということをいつだって忘れてはなりません。

We are rewriting the black American story

この曲の最終盤、Stevie Wonderのこの力強いフレーズが高らかにリフレインします。この数年の間、Black American Historyの書き直し作業は非常に悲しい記述を追加することに割かれてきました。その流れは、トランプ大統領の誕生により加速してしまうのかもしれません。しかしながら、ここから何度でも、American Historyは書き直せるはずです。身分や出自に関係なく、誰もが輝かしい人生を過ごせるAmerican Dreamの国に戻れるはずなんだと僕は信じています。これまでのアメリカがその若さゆえの多数の過ちを何度でもやり直せたのは、その修正能力の高さゆえでした。彼らが本当に「Make America Great Again」というスローガンを「美辞麗句」で終わらせないためには、アメリカが本来持ち続けてきた、そういった修正能力の高さこそが今後求められるに違いありません。願わくば、私たち日本国民もその一助となれることを心から願ってやみません。

 

Black America Again

Black America Again