これさえ聞いときゃ間違いない!今日の1曲

聞くものに悩んだらこれを聞け

【60曲目】FloriDada (Animal Collective,2016)

そういえばこれも自分のなかでは年間ベスト候補です、ということで今年2月にリリースされておりました、Animal Collectiveのじつに10枚目となりますアルバム「Painting With」より、リードトラックであり、フロリダとダダイズムをかけた「FloriDada」をご紹介。MVにしても曲にしても相変わらずこの人らはぶっ飛んでるなと気持ちよく聴いてきたのですが、この記事を書くために色々と市井の人々の感想などを聴いていると、このアルバムは特に従来のファンからの評価が芳しくないみたいですね。いわく、脱インディー化してセルアウトしようとしてるだとか何だとかみたいな声をよく聞きますが、はっきり言ってこれがセルアウトしてたらさすがにアメリカはトガりすぎです。まあToolがバカ売れするような国ですから何が売れても不思議じゃない度量みたいなのはありますが…。肝心の音や歌詞も、たしかに従来と比べれば多少はメロディアスだったりしてよりマスに向いたものになった感じは否めなくはありませんが、そもそも元々がハチャメチャな方向を見てきた人たち、というかそもそも目線以前に焦点も狂っててどこを見てるとかそういうレベルじゃないんだけど、メンバー全員が似たようなキマり具合で狂ってるので成立しているとでも言うべき音を出してきた方々なので、ちょっとやそっと目先を変えたところで彼らのそのハチャメチャさが喪失してしまっているとは私は微塵も思いませんし、このレベルの変化でそこそこ嫌がられるってどれだけコアなファンばっかなんだよとも思いますがどうでしょうか。その手のファンがややこしいのは別に日米問わずそうなんだなっていうお勉強にもなりましたが。とは言え、確かにPitchforkとその読者たちのアイコンとも言うべき彼らが、少しだけそういった所から距離を置こうとしたことにリスナーが大きく動揺してしまうのは、Animal CollectiveがこれまでU.Sインディの世界で負ってきた役割がいかほどに大きなものだったかの何よりもの証左だとも言えます。ただ、自分はそういうところに別にアイデンティティまで委ねてるわけではないので、単純に音として面白ければそれで良いというか、コンテクストによって評価が上がることはあっても下がることはないタイプのリスナーなので、純粋に彼らのこの大傑作を楽しめているというわけでありまして、ぜひ皆さまにもこの狂った音楽をシェアしたくなった、という単純にそれだけの話なのでありました。

 

Painting With

Painting With

 

 

【59曲目】Fuck With Myself (Banks,2016)

なぜ私は毎日来る日も来る日もこのブログを更新し続けるのか?そしてなぜ、ちょっと好きかもしれない程度の曲や、アルバム単位で見ると微妙だけど曲単位で見れば良いような曲は紹介しないのか? 理由は特に無い。強いて言えば、始めるときにそう決めたからとしか言いようがないのだが、そもそも、ではなぜ理由が必要なのか? なぜ、なぜと問い、そして答えなければならないのか?理由のあることしかやってはいけないのか?理由がないからこそやっているのではないのか?理由がすべて悪いのではないか?なぜと問い、そして答えられるような、必要性に駆られた行動だけが正しいのか?決してそんなことは無い筈だ。ノーベル生理学における日本人受賞者の発言が契機となり、近ごろ「役に立つか否か」がつとに話題となっていて、基礎研究の類は研究後数十年後にその真なる価値が明らかになるのだから的な口ぶりの話をちょくちょく聞くのだが、そもそも、数十年後に真なる価値がわかる必要があるのか? 否。必要性、功利性、現実的な理由、発展のため…、それら一切に左右されない無意味こそが我ら人類が日々追い求めていくべきものであろう。なぜなら、私たちの生そのものが根源的に無意味だからだ。生とはただ単純に自然現象であり、そこに理由などは存在しない。なぜ事物は存在するのか?という問いが、結局はトートロジーに帰するしかないのと全く同様である。そして私はなぜこのような、そもそもこのブログの主旨に全く掠りもしない駄文をつらつらと綴り続けているのかというと、とうとう完全にネタが切れたわけで、もう連続更新もやめちまおうか、いっそのことこのブログ自体しばらく放置してしまおうか、もうやってる理由もないしな、などと考えながらとりあえず時間を潰しているうちに、iTunesのNew For Youのシャッフルで、上記のように一切の妥協を許さずご紹介できるアーティストと奇跡的に邂逅できたのであり、いわば私のごく個人的な葛藤とその解決に付き合わされただけなのであって、皆さんにおかれましては徒労も徒労、せいぜい時給30円ぐらいの皆さんのたいへん貴重なお時間を頂戴いたしましたことを深くお詫び申し上げると共に今後のますますの発展を祈りつつ、1988年生まれのアメリカの女声シンガー、Banks=Jillian Rose Banksさんの2014年以来となります9/30リリースの生まれたてほやほやの2nd アルバム「The Atlar」より「Fuck With Myself」をご紹介致します。Coachellaに出演したり、同じくもうすぐ新譜のリリースを控えておりますWeeknd等とツアーを回るなど海の向こうではなかなかに評価も高い彼女ですが、何を隠そう私はこのアルバムが彼女を知ったきっかけでございますが、黒くはないからこそ出せるダークなR&Bテイスト、IDMのフィーリングを感じさせるテクスチャ、メインストリームの真っ只中でも違和感の一切ない耳馴染みのよいメロディ等、現代的なポップスに特徴的な要素をすべて兼ね揃えた非常に完成度の高いアルバムとなっており大変気に入ってしまいました。今回とりあげた曲こそちょっと変化球気味ではございますが、他の楽曲は今述べましたようにむしろ割とストレートな楽曲が多く、この聞きやすく歌いやすいR&Bテイストは、奇しくも先日新譜がリリースされました宇多田ヒカルさんのデビュー・アルバムであります「First Love」から湿気を取り除いてアメリカのカラッとした空気を足したような聞き馴染みがあるような気もします。聞きながらさらりと書いてしまいましたがこれアルバム通してかなり良くて、個人的には年間ベスト候補の1枚に入ってきそうです。序盤にしょうもないことで紙幅を裂きすぎたせいで皆さんの心象もよろしくはないでしょうが、それとは全く別個に独立してこのアルバムは本当に良いのでぜひお聞き下されば幸いでございます。

 

ALTAR

ALTAR

 

 

【58曲目】Love's Refrain (Jefre Cantu-Ledesma,2016)

Jefre Cantu-Ledesmaさん。サンフランシスコを拠点に、Tarentelというバンドをやったり、Root Strataというレーベルをやったりしてる方で、1995年よりソロ活動もスタートさせています。お聞きになってもらえるとわかる通り、今回あげた曲は美しきドローンでございますが、彼のレーベルもまたドローンやアンビエントのカタログを並べており、Grouperを発掘して自身のレーベルから世に送り出したのも彼だそうですよ。意外なところではOneotrix Point Neverなんかの名前もありますね。さて、音の話に戻りますと、シューゲイザーっぽいフィーリングもムンムンとしておりますが、2010年にはLove Is A Streamというアルバムを出し、インタビュー等でもMy Bloody ValentineLovelessに対するアンサーにしたかった旨述べておられますが、今作のLove's Refrainもその文脈で捉えられるべきなのかもしれないと考えております。その他、ドローンやグリッチ、はたまたシューゲイザー好きまでお気に召す一枚仕上がっておりますのでぜひお聞きください。

 

 

In Summer

In Summer

 

 

 

【57曲目】ワイルド・サイドを行け (Glim Spanky,2016)

2007年結成、2015年デビューの男女2人組バンド、Glim Spankyです。どことなくブルージーな楽曲、メンバー構成ともにWhite Stripesを連想させると話題沸騰中です。特筆すべきは女チバユウスケとも言うべき松尾レミさんの、ボーカリストになるべくして生まれてきたとでも言うべき歌声でしょう。この歌声はズルいです。ガラージな曲調との相乗効果でどんどんつんのめった世界が進行していくので非常にカッコいいです。ただ、他方で個人的に残念なのが、特にアレンジやプロダクション面でJ-POP・邦ロック方面に振れすぎているというか、これだけ材料が良いと、たとえばもっとシックに統一してみるとか、色々と調理の仕様もあるのではないかと思われる点ですが、しかしながらリーチを考えるとそれらも仕方ないのかもしれません。亀田誠治いしわたり淳治が噛んでるみたいですし、現にそれでスケールしてワンピースの映画の主題歌とかにもなってますしね。今後もっと洒脱になっていくと面白いので唾をつけとく意味でも紹介しようと思った次第です。

 

 

Next One(通常盤)

Next One(通常盤)

 

 

 

【56曲目】ぽあだむ (銀杏BOYZ,2014)

リリース時に聞こう聞こうと思っていたのにすっかり失念しておりまして、つい最近ふと思い出して聴いてみたところ大変に良かった、現時点での銀杏BOYZの最新アルバム「光の中に立っていてね」より、「ぽあだむ」を。正直言うと僕はこれまでの銀杏BOYZや、更にその以前のGoing Steadyはほぼ全くと言っても良いほど通っておりません。そんな僕が銀杏BOYZで唯一好きなのがこのアルバムなのですから、従来のファン達にとっては逆に受け入れがたいというのはよくわかります。だがしかし、良いものは良い。ノイズを積極的に取り入れた非常に意欲的なアルバムでありながら、本質的に彼らが持ち合わせていたソングライティング能力(時々サニーデイ・サービスとダブるような美しい奏でが聞こえたり)や峯田氏の文学的とも言えるような言語感覚(今度は僕はそこに吉村秀樹の幻影を見た)が下敷きにあるために、非常にポップにも聞こえてきます。Xinlisupremeに衝撃を受けたことのある人々はみんなめちゃくちゃハマるんじゃないかなと思うし、ひいては僕はこういう音像が当面においての邦ロックのスタンダードになるとすら思っているのですが、実際には全くその流れは来ておりませんね。アルバム通してとにかくすごい密度で、今回紹介した曲はアルバムの中でも1,2を争うぐらい聞きやすいというレベルでありますから、このアルバムの完成を待たずしてバンドが瓦解したというのも素直に首肯できるという話です。作品の完成度を追い求めて何もかもを失うだなんて、最近じゃもう聞かなくなったようなロック・ストーリーで、最後のロックンロール世代である僕らはここに何かを感じ取れずにはおれないわけじゃないですか。だからこそ、何もかもを喪失した今だからこそ、峯田氏が次に出してくるものが何なのか、僕は強く興味を持っています。

 

 

光のなかに立っていてね *通常仕様

光のなかに立っていてね *通常仕様

 

 

【55曲目】Concrete (Crystal Castles,2016)

Crystal Castlesです。元々カナダ出身の男女2人組エレクトロデュオで、なんと2人の出会いは軽犯罪者が刑罰の代わりに行うボランティアの清掃活動だったとかなんとか。そんなある意味運命的な出会いを果たし、3枚のアルバムをリリースしてノッていた2人でしたが、女の子のほうが2014年に脱退。ああユニットとしてはもう終わりなんだなとか思って勝手に解散認定してたのですが、実は新たな女性ボーカリストを迎えて継続してたらしく、そういう文脈の新譜です。なお、今作Amnestyは、ちゃんとタイトルがついた初めてのアルバムで、iTunesがぐちゃぐちゃになる自体がようやく改善されるかと思います。ちなみに、前ボーカル時代には僕はサマソニで拝見しておりましたが、口に含んだウォッカを観客に向かって毒霧噴射しまくるようなキレ味の持ち主の後任が果たして無事に見つかったのかどうかいささか不安であります。さて肝心の音の話ですが、従来の冷やっこくキレ味のあるダークなサウンドはそのままに、よりサウンドテクスチャに拘った1枚となっておりまして、印象としてはこれまでで一番ノイジー、それでいてダンサブルという風に、良い感じに進化しており、これまでのファンも新規のファンも広く取り込めるようなスケール感のあるアルバムとなっております。みなさまぜひお聞き下さい。

 

 

Amnesty

Amnesty

 

 

 

【54曲目】Follow Me (Andymori,2009)

うーん今聴いてもやっぱり死ぬほどかっこいいし天才的ですね〜、2009年のセルフタイトルアルバム、「Andymori」の開幕曲「Follow Me」を、昨日の吉田拓郎で言及した関連でご紹介してみます。僕がこの曲で一番震えるポイントは、歌の入りの「あこ〜がれの、インディアは、遠かったけれど…」という箇所で、裏拍から入ってきて、普通は伸ばさないであろう「あこ・がれ」という分節の仕方、これはもうリズム感が正直なところ日本人離れしてるとしか言いようがないのでありまして、そこで「おいおいこいつらマジかよ」と思って聴いてるところに、先程言及した箇所と同じ分節の仕方で「太陽が破裂するまで…」というフレーズが「たい〜ようが」という感じで入ってきて「うわこいつらマジだ」となってしまうこと請け合い、自分でもほとんど説明できている気はしませんがとにかくテンションが上がっているのだけはよく伝わると思いますしそれがロックンロールの本質だと思います。バンドはこの後徐々にメロウな曲調とヘヴィーに内省的な方向へと進んでいきますが、それはそれでめちゃくちゃ良くて、そちらばかり聴いている時期もありますが、やっぱり正体不明のドキドキ・ワクワクが体験できるのは、今回紹介したような初期の曲のほうを推したいと思います。

 

 

andymori

andymori