これさえ聞いときゃ間違いない!今日の1曲

聞くものに悩んだらこれを聞け

【88曲目】Blossom Dearie (Ravyn Lenae,2016)

て、天才が登場したで〜!クラシックの教育を受けて育ったそのシンガー・ソングライターは、若干17歳にして、R&Bエレクトロニカ・ソウル・ヒップホップを融合させた独特のスタイルで音楽界を一変させようとしている。シカゴ南部の不安定な地域で生まれ育った彼女は、SminoやJean Deaux、プロデューサーでもあるMonte Bookerなどの錚々たる面子を誇る音楽家集団「Zero Fatigue」の一員となり、2015年初頭には、すぐさまシカゴ地域を飛び越えて「一家に一枚」となったシングル「Greetings」をリリース。その直後には、シカゴを拠点とする有名レーベル「Three Twenty Three Music Group」と契約を交わし、そして同年8月、彼女の名をこれまでになく知らしめたデビューEP「Moon Shoes」が、Fake Shore DriveとMy Mixtapeでの先行リリースの後に全国販売され、Soundcloudにおいては優に200万回以上もの再生を記録している。っちゅうわけなんやな(公式Facebookより意訳)。

じゃあ具体的にどういう音楽から影響を受けているかというと、またまた公式Facebookより、StereolabOutkastBob MarleyElla Fitzgerald、あと他にはErykah BaduNASなんかの名前が上がってますね。公式Facebookが言うほど音楽界を一変させているかどうかに関しては判断を保留しておくにしても、このクロスオーバー時代においても一際ハイレベルなネオソウルを響かせてくれている17歳であることは間違いありません。ただ、この手の若き天才ミュージシャンの今後としてありがちなのが、「自分の音楽を狭いカテゴリやジャンルに押し込まないで」とか言いながら、極めて普通なポップスの範疇に収まっていく現象が多発することでありますので、今後に注視しつつ見守っていく必要があります。とりあえず誰かさっさと日本に呼んで!生で聞かせて!ジャケ写は微妙だけど他の写真はルックスも良いしきっと日本でも人気でるよ!!

 

Moon Shoes EP

Moon Shoes EP

 

 

【87曲目】White Heron (First Hate,2016)


はい、連続更新が途絶えましたがそういうこともありますね。デンマークの二人組、うち一人は中国人とのハーフだそうですFIRST HATEさんの2015年以来の2枚目のEP「The Mind Of A Gemini」より、「White Heron」でございます。ジャンル的にはシンセ・ポップだという紹介が多いのですが、ボーカルのせいでしょうか、いわゆるダーク・ウェーブ的な感触もかなり強く感じます。ちなみにプロデュースは、同じくデンマーク出身の鬼才・Trentemøller。この人プロデュースとかもするんですね。そういやTrentemøllerも今年新譜出してたけど聞いてなかった。なんかアンビエントのようなテクノのような生音のようなものが入り混じった何かを作る人という印象なので、彼らともばっちりハマったのではないでしょうか。フルアルバムもTrentemøllerがプロデュースしてくれたらリリースがなおさら待ち遠しいですね。

 

White Heron

White Heron

 

【86曲目】Give Up (American Wrestlers,2016)

はい、王道ギターインディロックです、American Wrestlersさんの2014年以来の2ndアルバムより「Give Up」をお届け。先ほど王道と言いましたが、この絶妙なハンドメイド感というか、ちょっとしたローファイ感みたいなのがインディロックの王道だと考えている時点で少し私はズレているのかもしれませんが、そんなこともお構いなく3分前後の軽快なバンドサウンドがサクサクと流れていきます。あんまり小細工もないのですが、小難しいサウンドが増えてきた昨今ではこれぐらいのほうが却って新鮮なのかもしれません。オススメです。

 

 

Goodbye Terrible Youth

Goodbye Terrible Youth

 

 

 

【85曲目】Mewo Akoma (Pat Thomas,1982)


ガーナ出身・High Lifeレーベルの重要人物であります、Pat Thomasさんのキャリアの黄金期を総括するアルバム「Coming Home」より「Mewo Akoma」をお届け。私はこのジャンルにかなり疎く、フェラ・クティぐらいしかまともに聞いたことない(もしかしてフェラを同じ括りに入れるのもあまり正しくないのかもしれない)のですが、こちらのPat Thomasさんもまためちゃくちゃ素晴らしいですね。この「Mewo Akoma」だなんて、もうまるっとRadioheadの「The King Of Limbs」の元ネタなんじゃないかと思うぐらいで、ここまで来ると彼らの得意な、再発見→再解釈→翻訳といったプロセスのうち一番最後の部分が極めて希薄なような気もしますが、しかしながらそういう風にもなってしまうPat Thomasさんによる完成度の高さが目立ちます。フェラにしてもPat Thomasにしても、まずその音像として最初に立ち上がってくるのがパーカッションですが、その次に特徴的なのは実はギターの音なんじゃないかと個人的には思っていて、King Crimsonがフェラのギターを流用したように、RadioheadはPat Thomasのギターの音を流用していたんですね〜という発見があります。さて、Pat Thomasさん自体の話というよりは、アフロ・ビートをいかにして白人の尖った人らが窃取してきたかみたいな話に紙幅を割きすぎているので少し話を戻しましょう。彼は1951年、音楽講師である父、バンドリーダーだった母の間に生まれたとあり、さらには叔父はNat King Coleとの作品でも名高いKing Onynaさんとのことで、生粋のサラブレッドなんですね。そんな血筋と環境でメキメキ才能を伸ばしたPatは、Ebo Taylorさんのバンドに加わり脚光を浴びるようになります。なおさっきから固有名詞がいっぱい出てきていて、どうやらそのいずれもがその筋じゃ恐らくマストなぐらい有名な方々のようなのですが、僕はそのほとんどを聞いたことがない。そっちもこのあと掘ってみるので許してください。その後、1980年代中頃よりロンドンを中心にヨーロッパでの活動も開始し、欧米での知名度を得ていきますが、後述するように欧米でもそこまで名の通った存在ではなかったようです。そういえば、確かフェラがヨーロッパデビューしたのも同じぐらいじゃなかったっけ、もうちょい前かな?ただフェラがエイズで早逝したのと対照的に、Patは今なお健在で、昨年にはPat Thomas & Kwashibu Area Bandとしてアルバム・リリースとそれに伴うツアーも行っております。あとすみません、今更ながら簡潔でわかりやすい解説があったのでそれを引用して結びとさせていただきます。

 

今回ストラットが手がけたパット・トーマスも、エボ・テイラーと並ぶハイライフの大ヴェテラン。
51年、かつてのアシャンティ王国の古都クマシに生まれたパットは、60年代ギター・ハイライフの立役者となったクワベナ・オニイナの甥っ子でもあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-10-22
69年に名門ダンス・ハイライフ・バンドのブロードウェイ・ダンス・バンドへ参加し、ウフルー・ダンス・バンドに改名した後のイギリス・ツアーを経験、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-09-18
73年に自己のバンド、スウィート・ビーンズを結成して、ソロ・シンガーとして独立しました。
「ゴールデン・ヴォイス」の異名を取り、A・B・クレンジル、ジュウェル・アッカー、パーパ・ヤンクソンとともに、ビッグ・フォーと呼ばれる人気シンガーとなった人です。

とはいえ、パット・トーマスを知る人は、相当熱心なアフリカ音楽ファンぐらいなもの。
70年代のハイライフはガーナ盤LPしかなく、80年代はガーナ経済危機のため、ほとんどレコードは作られませんでした。90年代以降にいたっては、在外ガーナ人社会のレーベルから、ほそぼそとCDがリリースされるだけでしたからねえ。
欧米にディストリビュートされる作品はわずかばかりしかなかったので、パットばかりでなく、この時代のハイライフの名シンガーが、海外に紹介されることは、皆無といっていい状態でした。

ヴェテラン・ハイライフ・シンガーの復活 パット・トーマス:after you:So-netブログ

 

COMING HOME

COMING HOME

 

 

 

【84曲目】Souvenir Shop Rock (Savoy Motel)


Clash Meets Lo-Fiとでも言うべきでしょうか、脱力感が絶妙な、ナッシュビル出身の4人組 Savoy Motelの、セルフタイトル・デビューアルバムより「Souvenir Shop Rock」をお届け。メディアによっては「70s リバイバル」だとか、「レトロ・パンク」だとか言われてますが、確かにそれも納得の昔懐かしさといいましょうか、レトロスペクティブなアプローチを意識的に行っているのはPVを見ても明らかなのではありますが、他方で楽曲を通して聞くと、そういったレトロスペクティブな引用が随所に見られるのは紛れもない事実でありながらも、トータルで受ける印象としては確実に2016年のサウンドなのがとても面白いですね。正直ちょっとコミックバンド的な人たちなのかと思ってましたが普通に粒揃いの良盤なので、ぜひオススメしたいと思います。

 

 

Savoy Motel

Savoy Motel

 

 

 

【83曲目】 Friends ft. Bon Iver and Kanye West (Francis and the Lights,2016)

ミュージシャンでありプロデューサーでもあるFrancis Farewell StarlightさんのプロジェクトであるFrancis and The Lightsの初となるフルアルバム「Farewell, Starlight!」よりFriends ft. Bon Iver and Kanye Westをご紹介。ちなみに、楽曲自体はChance The Rapperの「Some Friends」という楽曲からのサンプリングがベースになっていたり、客演にCashmere Catがいたりと、名前を並べただけでも相当豪華。アルバム全体の音像としては、音数をタイトめに絞ったテクノ的なものをベースに、ヒップホップやファンク、インディロックなどの種々の添え物をしてみましたという感じ。曲によってはMetafiveを彷彿とさせるような、もはやフュージョンというべきでは?とも思わされるような楽曲や、お、今度はゴスペルかな?だなんていう曲までもあり、よくよく聞くと非常にバリエーションに富んだアルバムとなっておりますので、ぜひ聞いてみてください。

 

 

Farewell, Starlite!

Farewell, Starlite!

 

 

 

【82曲目】Don't Touch My Hair (Solange,2016)

かなり久々にボブ・ディランとは全く関係ない新譜からのご紹介です。Beyonceさんの妹・1986年のフィメールシンガー Solangeさんのキャリア通算3枚目のアルバム「A Seat At The Table」より「Don't Touch My Hair」を。全体のクオリティとしてかなり洗練された、素晴らしくクールでダンサブルな1枚となっておりますが、プロデュースを見ればQ-TipやQuestloveなど錚々たるメンツですのでそりゃ納得。いずれも名前負けしないクオリティの仕事を重なって出来上がった素晴らしいアルバムですのでぜひオススメさせていただきます。

 

A Seat at the Table

A Seat at the Table