【85曲目】Mewo Akoma (Pat Thomas,1982)
ガーナ出身・High Lifeレーベルの重要人物であります、Pat Thomasさんのキャリアの黄金期を総括するアルバム「Coming Home」より「Mewo Akoma」をお届け。私はこのジャンルにかなり疎く、フェラ・クティぐらいしかまともに聞いたことない(もしかしてフェラを同じ括りに入れるのもあまり正しくないのかもしれない)のですが、こちらのPat Thomasさんもまためちゃくちゃ素晴らしいですね。この「Mewo Akoma」だなんて、もうまるっとRadioheadの「The King Of Limbs」の元ネタなんじゃないかと思うぐらいで、ここまで来ると彼らの得意な、再発見→再解釈→翻訳といったプロセスのうち一番最後の部分が極めて希薄なような気もしますが、しかしながらそういう風にもなってしまうPat Thomasさんによる完成度の高さが目立ちます。フェラにしてもPat Thomasにしても、まずその音像として最初に立ち上がってくるのがパーカッションですが、その次に特徴的なのは実はギターの音なんじゃないかと個人的には思っていて、King Crimsonがフェラのギターを流用したように、RadioheadはPat Thomasのギターの音を流用していたんですね〜という発見があります。さて、Pat Thomasさん自体の話というよりは、アフロ・ビートをいかにして白人の尖った人らが窃取してきたかみたいな話に紙幅を割きすぎているので少し話を戻しましょう。彼は1951年、音楽講師である父、バンドリーダーだった母の間に生まれたとあり、さらには叔父はNat King Coleとの作品でも名高いKing Onynaさんとのことで、生粋のサラブレッドなんですね。そんな血筋と環境でメキメキ才能を伸ばしたPatは、Ebo Taylorさんのバンドに加わり脚光を浴びるようになります。なおさっきから固有名詞がいっぱい出てきていて、どうやらそのいずれもがその筋じゃ恐らくマストなぐらい有名な方々のようなのですが、僕はそのほとんどを聞いたことがない。そっちもこのあと掘ってみるので許してください。その後、1980年代中頃よりロンドンを中心にヨーロッパでの活動も開始し、欧米での知名度を得ていきますが、後述するように欧米でもそこまで名の通った存在ではなかったようです。そういえば、確かフェラがヨーロッパデビューしたのも同じぐらいじゃなかったっけ、もうちょい前かな?ただフェラがエイズで早逝したのと対照的に、Patは今なお健在で、昨年にはPat Thomas & Kwashibu Area Bandとしてアルバム・リリースとそれに伴うツアーも行っております。あとすみません、今更ながら簡潔でわかりやすい解説があったのでそれを引用して結びとさせていただきます。
今回ストラットが手がけたパット・トーマスも、エボ・テイラーと並ぶハイライフの大ヴェテラン。
51年、かつてのアシャンティ王国の古都クマシに生まれたパットは、60年代ギター・ハイライフの立役者となったクワベナ・オニイナの甥っ子でもあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-10-22
69年に名門ダンス・ハイライフ・バンドのブロードウェイ・ダンス・バンドへ参加し、ウフルー・ダンス・バンドに改名した後のイギリス・ツアーを経験、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-09-18
73年に自己のバンド、スウィート・ビーンズを結成して、ソロ・シンガーとして独立しました。
「ゴールデン・ヴォイス」の異名を取り、A・B・クレンジル、ジュウェル・アッカー、パーパ・ヤンクソンとともに、ビッグ・フォーと呼ばれる人気シンガーとなった人です。とはいえ、パット・トーマスを知る人は、相当熱心なアフリカ音楽ファンぐらいなもの。
70年代のハイライフはガーナ盤LPしかなく、80年代はガーナ経済危機のため、ほとんどレコードは作られませんでした。90年代以降にいたっては、在外ガーナ人社会のレーベルから、ほそぼそとCDがリリースされるだけでしたからねえ。
欧米にディストリビュートされる作品はわずかばかりしかなかったので、パットばかりでなく、この時代のハイライフの名シンガーが、海外に紹介されることは、皆無といっていい状態でした。
【84曲目】Souvenir Shop Rock (Savoy Motel)
Clash Meets Lo-Fiとでも言うべきでしょうか、脱力感が絶妙な、ナッシュビル出身の4人組 Savoy Motelの、セルフタイトル・デビューアルバムより「Souvenir Shop Rock」をお届け。メディアによっては「70s リバイバル」だとか、「レトロ・パンク」だとか言われてますが、確かにそれも納得の昔懐かしさといいましょうか、レトロスペクティブなアプローチを意識的に行っているのはPVを見ても明らかなのではありますが、他方で楽曲を通して聞くと、そういったレトロスペクティブな引用が随所に見られるのは紛れもない事実でありながらも、トータルで受ける印象としては確実に2016年のサウンドなのがとても面白いですね。正直ちょっとコミックバンド的な人たちなのかと思ってましたが普通に粒揃いの良盤なので、ぜひオススメしたいと思います。
【83曲目】 Friends ft. Bon Iver and Kanye West (Francis and the Lights,2016)
ミュージシャンでありプロデューサーでもあるFrancis Farewell StarlightさんのプロジェクトであるFrancis and The Lightsの初となるフルアルバム「Farewell, Starlight!」よりFriends ft. Bon Iver and Kanye Westをご紹介。ちなみに、楽曲自体はChance The Rapperの「Some Friends」という楽曲からのサンプリングがベースになっていたり、客演にCashmere Catがいたりと、名前を並べただけでも相当豪華。アルバム全体の音像としては、音数をタイトめに絞ったテクノ的なものをベースに、ヒップホップやファンク、インディロックなどの種々の添え物をしてみましたという感じ。曲によってはMetafiveを彷彿とさせるような、もはやフュージョンというべきでは?とも思わされるような楽曲や、お、今度はゴスペルかな?だなんていう曲までもあり、よくよく聞くと非常にバリエーションに富んだアルバムとなっておりますので、ぜひ聞いてみてください。
【82曲目】Don't Touch My Hair (Solange,2016)
【81曲目】Don't Think Twice It's All Right (おおはた雄一)
はい、ボブ・ディランさんのDon't Think Twice It's All Right(くよくよするなよ)のカバーでございます。ボブ・ディランの日本語カバーって結構あるみたいなのでいろいろ掘れば良いものがどんどん出てきそうな感じはありますね。やっぱり日本語で聴いているほうが言葉に実感が持てます。こういうことを言うと、大学時代の知り合いが、英語のほうが直接的に響いてきてよいみたいなこと言ってたのですげえなと思ったのを思い出します。そんな風に、英語のままリアリティを感じられるほうがもっと洋楽は楽しめそうですよね、当たり前の話なんですが。自分は一応英語のままでも聞き取れはしますけど、じっくり歌詞を読み込まないと意味まではちゃんとは入ってこないです。さて、こちらのカバーは、おおはた雄一さんの「SMALL TOWN TALK~“アコースティック・ライフ"カバーズ~」というアルバムに収録されておりますが、他にも渋いチョイスの楽曲が並んでおり、我らがムッシュかまやつの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」のカバーなんかは確実に原曲越えしており非常にかっこよいのでお薦めです。今回のおおはた雄一さんをきっかけにムッシュかまやつの原曲バージョンのほうを紹介しようかと思って何回か聴いてみましたが、なんか天然のゆら帝みたいな感じで非常に怖かったのでやめておきます。
SMALL TOWN TALK ~“アコースティック・ライフ”カバーズ~
- アーティスト: おおはた雄一
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【80曲目】Two Months off (Underworld,2002)
ボブ・ディランばっか聴いてる日々が長らく続いてると、ふとした瞬間に街角で耳に入ってくるハウスのビートが脳に稲妻が走るほどかっこよく聞こえてきました。ボブ・ディランの非常に人間的なサウンドとのコントラストとしてのドラムマシーンとシンセサウンド。それらが一番躍動しているのは、Underworldの代名詞とも言うべきBorn SlippyやRezのようなアンセム以上に、アルバム「A Hundred Days Off」のリードトラックとも言うべきこの曲、「Two Months Off」ではないかと個人的に思っています。さてこのUnderworldという人らですが軽くおさらい。デビューは古く1988年ですが、この頃は現在の音楽性とは全く違ったといいます。ではその後何があってこうなったかというと、当時のレーベルとの契約打ち切りの憂き目の後の1992年、DJであるカール・ハイドをメンバーに迎え、抜本的に音楽性を転換したところから今の彼らに歩みが始まります。その後、先述した「Rez」をキッカケにクラブシーンでのスターダムを駆け上がり、そしてさらには映画としても名作として語り継がれ、先日は続編製作のアナウンスがありました「Trainspotting」の主題歌として「Born Slippy」が、今度はアンダーグラウンドを飛び出て一般リスナーにまで届く大ヒットとなり、その名声を確たるものとしました。なお、「Trainspotting」の続編の話題が盛り上がっているなかで、いくつか当時のこぼれ話も出てきているのですが、なんと当時、最初に主題歌の製作を頼まれたのは彼らではなくてOasisだったという話まで出てきているそうです。しかしながらそれは実現しなかったのですが、それはOasisの面々が、「郊外の電車の高架下に集まってキメる」という隠語である「Trainspotting」の意味を履き違え、文字通り鉄オタのための映画だと思って断ったそうです。「Morning Glory」のような明らかなドラッグソングをレパートリーにしながらそんなことあんのかよとかいう話ではありますが、隠語やスラングの類なんて案外そんなものかもしれません。Born Slippyがこの手のジャンルをポピュラーミュージックにまで押し上げたことを考えると、Oasisが快諾していた世界ではもしかすると以前アンダーグラウンドの音楽だったりしたのかもしれません。とは言え、Underworldの音を考えるとそれも杞憂というか、彼らは遅かれ早かれいまのような立場になっていたのではないかとも思うわけです。どういう事かというと、彼らのサウンドの特徴として、この手の音楽にしてはアクやクセがなく非常に聴きやすいという点があります。スマートで洗練されていて、もちろんダンサブルで、かつメロディアス。聞きようによっては非常にアーバンにさえ響いてくるわけです。それらは時代の最先端のポップスとしていつだって求められてきたものですし、その趨勢は今後も変わることはないでしょう。ちょっとアンダーグラウンドだったり、ちょっとアバンギャルドだったり。その「ちょっと具合」というのは時と場合によりまちまちではありますが、Underworldのその「ちょっとアンダーグラウンド具合」というのをあの時代が確実に求めていました。そんな彼らのアンセム・RezやBorn SlippyよりほんのちょっとハウスよりなTwo Months Offという曲を、僕は時々無性に聴きたくなるのでした。
【79曲目】Losing My Religion (R.E.M)
ボブ・ディランに限らず素晴らしい歌詞を書くアーティストは数多く存在するわけで、じゃあ自分は誰の書く歌詞が好きか、考えてみたところ、一番最初に思いついたのはジョン・レノン、次にモリッシー、そしてカート・コバーン。Foster The Peopleのマーク・フォスターもシニカルで良い歌詞を書きますね。こう列挙してみると自分のある種の素直さを突きつけられているようで少し恥ずかしい気持ちもします。なお、一番好きなミュージシャンは?と聞かれると、レディオヘッドだと答えるのですが、他方でトム・ヨークの書く歌詞でそんなめちゃくちゃ好きなのがあるか?と言われるとパッとは思いつかないのが事実なんですよね。たしかに、僕と同じように、他に歌詞の良いミュージシャンは誰か?といった話題を近頃よく見かけますが、トム・ヨークの名前が挙がっているのはついぞ見たことがない気がします。意外とインパクトや鋭さみたいなのに欠けるんですよね。さて、そんなトム・ヨークが影響を公言し、一時期はよくつるんでいて、しかしトムとは違い、歌詞のよいミュージシャンとしてよく名前が挙がっている印象があるのが、解散してはしまいましたが、R.E.Mのマイケル・スタイプで、彼らの最大のヒット曲(らしい、調べて初めて知りました、もっとキャッチーなのあるじゃん)のLosing My Religionをご紹介。歌詞はLosing My Religion / ルージング・マイ・レリジョン (R.E.M)1991 - 洋楽和訳 (lyrics) めったPOPSを参考に。とりあげておいて何ですが、正直言うと僕はいまだにマイケル・スタイプの歌詞ってそこまでピンと来てないんですよね。いやもちろん普通に好きで、曲もよく聞きますが。ちなみに、この曲はPoliceのEvery Breath You Takeのような、ある種の強迫観念めいたラブソングの類であると説明しているようなんですが、Every Breathがどことなくロマンのある印象を受けるとすれば、Losing My Religionは困惑、無力感といったワードが似合うような気がします。聞くからにドマイナーな曲調や、マイケル・スタイプの歌声のせいなのでしょうか。そういえば、歌詞のよいアーティストとして元PoliceのStingの名前もよく聞きますので、正直あんまりじっくり読んだことはありませんでしたが、そのうち取り上げてみたいと思います。